NEXCO中日本:昨年に続き「i-MOVEMENTショーケース見学会」を開催
2023年10月12日木曜日、「i-MOVEMENTショーケース見学会」が伊勢原保全・サービスセンターで昨年に続き報道陣に公開されました。i-MOVEMENTは最先端のICT技術・ロボティクス技術の導入により、人口減少など高速道路を取り巻く環境の激変に対応しつつ、高速道路のモビリティの進化を目指す活動として、NEXCO中日本が2019年6月から取り組んでいます。今回も新しい技術や改善された技術が紹介されました。
ショーケースとは川崎DKCと伊勢原保全センターで行われている仮実装のことで、i-MOVEMENTの目指す形と現状が把握できる場所であることからいち早く実装が行われています。
高速道路には電力会社から送られてくる高圧電気を交通情報設備や道路照明設備、トンネル照明設備、建物内・料金所設備などで使用する為に低電圧に変電する「受配電設備」があります。現在は現地に赴いて目視・触診点検を行っています。伊勢原保全センターの2カ所では遠隔点検が行われ、現地の設備に監視カメラ・センサーなどが設置してあります。事務所から現地に設置されたパソコンを遠隔操作して、揺れ、熱、視覚、匂い、音を数値化してチェックを行っています。これにより現地へ赴く時間が不要となりました。将来的には蓄積したデータを生かして、更新時期をとらえる予兆保全や維持修繕計画の導入に生かしたいとの事です。
トイレに関する取り組みでは、IoTによるトイレ維持管理の効率化が行われていて、トイレなどにセンサーを取付け、トイレットペーパーや水石鹸、ゴミ箱の状況やトイレの利用者数、温度や臭気などをIoTクラウドに収集し、その情報をNEXCO社員、SA維持管理従事者、清掃員へ必要な情報を提供し、状況把握やデータを分析し施策検討に活用しています。現在、東名高速道路の駒門PA(上り)と西湘バイパスの西湘PA(下り)に設置してあります。
トイレの床面を自動で清掃するロボット「トイレ床清掃ロボット」の紹介や小便器下部を自動で清掃する「狭小部清掃ロボット」では実演が行われました。小便器下部の清掃は、しゃがむ姿勢を取りながらの清掃で身体的に負担となっていました。ロボットは小便器に近づくとブラシが横にスライドし、小便器下部の清掃を行いながら終端まで移動、帰りは、足元の位置を清掃しながら移動します。ロボット導入により清掃作業が約1割短縮しました。
高速道路利用者にハイウェイラジオを提供している交通情報をスマホから提供するアプリ「みちラジ」では、スマホのGPS位置情報をもとに進行方向の情報を提供、IC・JTC手前では、交通情報の他に事故、落下物、工事規制の情報が提供されます。
作業員の安全を確保する為、規制作業の標準化が行われています。
規制先端部誘導灯「シンクロピカッチ」は超高輝度LEDの誘導灯で、車線規制は、約300mに矢印板を設置して行われ、「シンクロピカッチ」を矢印板の上に約60m間隔で設置して飛行場の誘導灯のように流れて点滅することでドライバーに車線変更を促します。
高速道路の工事現場などへ大型車が誤侵入した際に、強制的に車両を止める装置「とまるぞーⅡ」があります。重量は130キロあり、運搬時に進行するクルマに背中を向ける危険性がありました。運搬装置を開発したことにより、安全かつ容易に運搬が出来るようになりました。
「長距離型指向性スピーカー」は遠方まで音が到達できるホーンスピーカーを活用した注意喚起システムで車両検知器と連動して、通行車両を検知しスピーカーで注意喚起をするシステムです。
「エアバッグ式安全チョッキ」は事故時の身体への衝撃を緩和し損傷を軽減させる装置で安全チョッキに取付けたセンサーが規定値以上の衝撃を検知した時に、エアバッグが働き、頭、胸部の損傷を軽減します。
誤侵入車両感知システム「みはるんだー」は、ラバーコーンに電光センサーの「みはるんだー」をセットして、ラバーコーンの間を車両が誤進入し、電光センサーを遮断した時に、作業員が持つ受信機「しらすんだー」から警告音を鳴らし、待避行動を促します。
「車両侵入AI検知システム」は、AIによる画像処理技術を活用して、任意で設定したエリアに一般車両が侵入した時に警告アラート発報をして、その先の作業員に警告アラートで待避行動を促すシステムです。
「バルカンバリア」は、運搬性に優れた剛性規制材で下部に滑車が付いてホイールジャッキが内蔵され移動が容易になりました。バルカンバリアの接続はピンで連結をします。
橋梁の保全点検では、鋼板桁橋において、検査路が設置されていない桁間では、橋軸方向に設置した2本のケーブル上を走行する鋼板桁橋狭小部点検ロボット「ケーブルカム」で点検を行います。操作者がモニターで確認しながら損傷個所の撮影を行います。
構造物点検調査ヘリシステムは、橋梁の床版や橋脚をドローンを用いて自動航行で点検をするシステムです。構造物の下では、GNSS信号などが途切れてしまう為、そのような場所でも安定した飛行を保つように測量機トータルステーションを用いて実現しています。ドローンは予め作成した飛行経路を飛行して橋脚の撮影を行います。さらに複雑な構造の橋梁でも適用できるようにLIDARスキャナー搭載したドローンで点群データを取得して飛行経路を作成する手法を開発中です。
また、ドローンで撮影した画像の解像度、合焦度、ブレをAIで判定する画像品質確認ツールや現地の撮影画像を変状検知AIソフトウェアに読み込ませて、ひび割れ、鉄筋露出等を抽出するひび割れ抽出技術、撮影した動画をWebアプリ(Point3D)を用いて画像を3D化してリンクURLを作成し、既存の構造物台帳と連携をする点検記録用3次元データ化Webアプリの紹介がありました。
小径管点検ロボット(P-CIS)は、小径管のパイプカルバード内を自走して点検を行うロボットで先頭に360度カメラ、後方にデジタルスチルカメラが取付けてあります。今回は、カメラ位置が管の中心に調節出来るように改良してありました。
路面性状測定車(ロードタイガー新型7号車)は舗装路面の平たん性、ひび割れ、わだち掘れを測定する車両で、路面に向かって青い光線を放ちながら測定を行います。車両が小型化され、普通運転免許で運転できます。最高速度も120キロに向上、昼夜の測定が可能になりました。
また、黄色いパトロールカー維持管理車両では、現在試行中の取り組みで、前後左右に高画質カメラ、振動・音声収集・路面状況検知の各センサーを搭載してセンシング車両としてパトロール中に路面状況を収集、AIを用いて路面変状の検知をリアルタイムで行い、道路管制センターとのリアルタイム連携が図れています。
VPIS2022は道路管理業務に対応して、ドライバーに様々な情報を自動で案内する支援システムで車両に搭載されたセンサーや制御機能を集約して、道路状況や雪氷作業区間など高速道路上で必要な情報を自動的に案内します。
今後ショーケースの結果をもとに業務運営マニュアルが作成され本格導入へと進みます。