千葉県市原市にある市原湖畔美術館では、2025年9月15日（月・祝）まで、小湊鉄道の開業100周年を記念した展覧会「古往今来・発車オーライ！」を開催しています。

小湊鉄道は、市原市の五井駅から上総中野駅までを結ぶ鉄道で、2025年に開業100周年を迎えました。今回の展覧会は、この節目の年を機に、地域の宝である小湊鉄道の歩みを振り返り、その魅力を未来へつなげることを目的としています。

現在も昭和時代の車両や駅舎が現役で活躍する小湊鉄道は、鉄道ファンや地域の人々から親しまれています。一方で、市原市南部では過疎化が進み、同鉄道も経営の厳しさに直面しています。地域型芸術祭「いちはらアート×ミックス」でも、小湊鉄道の活性化に向けたアートプロジェクトが行われてきました。

本展では、4名の現代アーティストによる作品を通して、小湊鉄道の歴史と魅力を多角的に発信しています。

高滝駅の駅舎では、工業用ミシンを用いて刺繍の表現を拡張してきたアーティスト・青山悟さんの作品が展示されています。小湊鐵道の制服の背中に「FOREVER KOMINATO RAILWAY（小湊鉄道よ永遠に）」と刺繍された作品が来場者を迎えます。

また、「言葉」と「イメージ」のズレをテーマにした作品で知られる中﨑透さんは、小湊鐵道の社員や地域住民へのインタビューをもとにインスタレーションを制作。美術館内だけでなく、高滝駅から美術館までの道中にも作品が点在し、鉄道とともに歩んできた人々のエピソードが紡がれています。展示室内では、小湊鉄道の部品や関連資料とあわせて中﨑さんの作品が紹介され、ひとつひとつの展示品にまつわる想いが語られています。

さらに、デジタルとアナログの境界をテーマに制作を行うクワクボリョウタさんは、光源を備えた鉄道模型を用いたインスタレーションを発表。100年前、現在、そして100年後の風景を描きながら、小湊鉄道が無限（∞）のレールを走る時空を超えた旅へと誘います。

古典や現代の文献を横断する創作を行う中野裕介さん（パラモデル）は、かつての小湊鐵道の幻の路線計画や、房総にゆかりのある戯作『南総里見八犬伝』、高滝エリアの旧開発構想などを題材に、虚構と現実を交錯させた大規模なインスタレーションを展開。工事用シートやプラレール、映像、音楽、貴重な資料などを駆使し、独自の世界観を表現しています。

そのほかにも、小湊鉄道に関する貴重な資料が展示されており、「幻の小湊鐵道鳥瞰図」パンフレットや、2号機関車のヘッドマークなども見ることができます。

市原湖畔美術館へは、小湊鐵道・高滝駅から徒歩約20分。周辺には高滝湖や星野農園、市原ぞうの国などの観光スポットもあり、あわせて楽しめます。